5歳児健診の役割の多様性
誕生した子どもの発達を確認する地区保健センターで実施される保険事業の一つである「健診(健康診査)」は、4ヶ月健診、1歳6ヶ月健診、3歳児健診と呼ばれ、心身の健康状態を確認するためにかねてより実施された来ている(その他の時機に任意で行われることがある)。その後、5歳児健診が21世紀に入る前後に新たに加わって全国的に展開されてきている。この21世紀に入る時機は、全国の教育相談の主訴として、落ち着いて話が聞けない、注意が集中できない、教室から飛び出すといった子どもたちについての相談が増えた時機と重なっているようだ。
5歳児健診の実施は、小学校入学後に、対人関係、行動、コミュニケーションといった社会性に問題を有することに起因して、不登校、心身症などの二次障害に至ることからの予防的な位置づけとしてとらえることもできる。5歳児健診は、子どもにとって、現代社会において学校教育を基盤とした社会性の発達的可能性の順調な伸長をもたらす契機としてとらえることができる。ただし、5歳児が、落ち着けない、注目や集中が続きにくい、集団活動に乗りにくいといったとき、いくつかのことが浮かんでくる時もあるだろう。そのために、5歳児健診では、より多くの社会的な立場(専門性が異なる視点)からの理解と働きかけによって、座る、聞く、注目することが大切にされた時間を子どもにもたらされることが欠かせないだろう。
2022.4.5